アルフォン少尉の館 屋根裏の手記

館主碧髪のサーダによる2005年10月下旬からの更新記録を兼ねた製作秘話

江國の感性

2008年05月28日(Wed) 22:40:07

 このところ朝の散歩がことのほか気持ちいい。朝の、といっても、勤め人とかで道がわさわさし始める朝ではないけど。朝早起きは苦手ではない。でも店とか図書館の開く時刻を待って外出するのである。午前10時の陽光の輝かしさ。ただこれを味わうためにだけでありたいが、折角なのでついでに寄って来るのだ。先日図書館で借りたものは『とるにたりないものもの』『雨はコーラが飲めない』『泣く大人』であった。珍しく江國香織の本が書架にあったから。そして目についたから。

 江國は凄い。父が偉い人だから芽が出たのだろう、ちょっとこういう繊細さでは日本の文壇?では潰されるタイプの人だと思う。でも出てくれてよかった。最初にこの人の作品と出逢ったのは、何と入試問題の小説問題文としてであった。そんな関係の仕事をしていなければ決定的に感銘を受けていなかったかも知れない。以来、思い出したように、書架にあれば読む。自分で買ったのは『すいかの匂い』くらいだけど、多分買い出したらきりがないと思う。だから買わない(その資本はリサたんガスたんに回すためである。ケチ)。

 『とるにたらないもの』はことにすっと沁み込んでよかった。La vie quotidienneとでも言うべき日常の風景・ものを切り取って思いのたけを語る。それが気持ちいい。例えば「トライアングル」p.36-38。

「まず、華奢で銀色で三角形できれいだ。メロディでもリズムでもなく「音」をつくる楽器(逆にいうとメロディもリズムもつくれない楽器)。ぴん、という澄んだ音の美しさ、硬質な感じ。ほかの楽器とは全然別な場所にぽつんといるような、孤立した立場というか消極的なわがままさ。(……中略……)私の楽器だ。そう思った。」

 この本で江國が選んだとるにたらないものものは、どれもわたくしの感性に響くものばかりだったので驚く。似ているのかも知れないし全く反対なのかも知れない。ただ、わたくしはこんなに自由奔放に世間に出て行けるほどもう人間を信用していない。江國は繊細であると同時にある種鈍感力もあるのかな?

 今日はこれらの本を返して、またたまたま小説の棚にあったから傑作の誉れ高い『つめたいよるに』と、ほかにも三冊借りてみた。そして、『つめたいよるに』はものの数時間で浸透するかのようにごくごく読んでしまった。(などと書くといかにも江國の文章みたいな擬声語擬態語使用法だけど。)あああ……こういう透明な日常のファンタジーがあってもいいのだ、と、今更安心してみる。時間軸と自己他者のメビウス。初夏の読書には本当にお勧め。ただし詩心のないヒトにはつまらないかも知れないよ。

 ついでに報告。シュピルマンを追体験した翌日、結局また楽譜を引っ張り出してしまった。そして、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズの譜読みを始めてしまった。ただし、三年前とは違って今度は大ポロネーズの方からね。一日4小節練習することにして、8/18までには一通り弾けるようになる筈???! いやー、そんなの夢かな。まあ、途中で情熱が冷めるかも知れないにせよ、何もしないで初めから弾けないと諦めるよりいいと思うのさ。プロでもアマチュアでさえもないただのディレッタントだし。弾き切るには相当体力が要るので、筋肉の超回復を促進しよっと。(←解剖学用語)
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シュピルマンの生涯

2008年05月26日(Mon) 00:27:25

 見終わった。これで三回目。一度目は映画館で、二度目は地上波吹き替えで。こういうものはそんなに何度も見る気にはなれない。きついから。でも、心して覚悟して見るとやっぱりいいよ。

 ほかの人のレヴューであったんだけど、ホーゼンフェルト大尉が初めてシュピルマンに出逢って話しかけるとき、一貫してSieを使っているのに、翻訳がぞんざいでよくない、というのがあった。言われればその通りなのだ。英語以外の主要ヨーロッパ語では敬称と親称というのがある。家族や目下の者に使う時と神に呼びかける時はdu「きみ・おまえ」を使う。やや距離がある場合はSie「あなた」で、公式には専らこちらを使う。つまり、ユダヤ人であるにもかかわらず、ホーゼンフェルト大尉だけは最初から汚いなりのシュピルマンを一人前の他者として扱っていたのである。

 ここに至るまでの描写は実に淡々と酷かった。無作為に叩き出され、銃弾で頭を撃ち抜かれるユダヤ人たち、車いすから立てないがために窓から突き落される老ユダヤ人、一言質問したがために問答無用に額を打ち抜かれる若いユダヤ人女性……彼らはみなduで命令され、害虫駆除のように殺される。こんなものを見てしまうと、ああ、本当にドイツ民族が世界史上に遺した罪はどう取り繕っても購えない、と思う。ヒットラー一人が悪人だったわけではないのだ。(ついでに言っとくがヤマトの歴史に於いて西崎さん一人が悪かったわけではないぞ。)

 そして、再びホーゼンフェルト大尉である。軍務を執る机の上には妻と三人の子供たちと一緒に写った写真があった。こういう面を見ると、また揺り返しが来る。すべてのドイツ人が悪かったわけではないぞ。

 実際、人はさまざまだ。弱さを持っているから筋を通したくても通せないことだってあるし。一方で本当に救いようのないクズもいるし。わたくしは死刑制度はあってしかるべきだと思っている。反対する側の論理は、人が人を裁くとはおこがましい、ということだろうけど、再犯の多さ。性根を叩き直すことができなければだめなのだ。(『羊たちの沈黙』見た? 怖いよー。)甘かったのでかつてわたくしも後ろから刺されるという痛い目を見たが、やっぱりそういうのはとっとと死刑にすべきなのだろう。

 シュピルマンを演じたエイドリアン・ブロディは努力家で、かねがね凄いと思っていた。前にもどこかで書いたと思うが、役作りのために16kgの減量をしたそうだ。もともとそんなに太っている人ではないから、これだけ痩せるには相当の食事制限が必要だったろう。それと、ピアノ弾きの技術は本当に弾けるようにコーチについて相当のところまで行ったそうだ。手の吹き替えなしの場面もある。

 ただ、アカデミー賞授賞式で無邪気に受賞を喜ぶ姿を見てしまうと、ちょっと幻滅するけどね。もうちょっと超然としていて欲しかったわけだけど。

 そんなことを色々思い出しながら見ていた。もう6年も前なんだね。ワルシャワの広大な廃墟へ一人逃げてゆく、あの圧巻の構図はドイツ軍の馬鹿さ加減を思い出させてくれる。そして一点の良心をも。明日からどんな困難にも耐えられる、と思う。

 本当によく生き延びてくれた。おそらく、ホーゼンフェルト大尉のような人はほかにもいたのだろうと思う。記録がないだけで。助けた人も助けられた人も死んでしまったのだ。でも、その思いは引き継ぎたい。わたくしにできることといえばアルフォン少尉に降りかかる火の粉を何度でもいつまでも振り払うことくらいだが。自分が汚れても。

 アンダンテ・スピアナート……また弾いてみようかななどと思う。シュピルマン命の讃歌である。

戦場のピアニスト

2008年05月25日(Sun) 09:39:25

 またまたヤリマス。まだのヒトは是非ミテミテ。もう見たヒトももう一回ミテミテ。シネフィルイマジカでどぞ。番組案内

新着契約

2008年05月21日(Wed) 07:50:00





 ニフティなんて懐かしいですな。ブロードバンドにする時解約したきり、もうあまりご縁がなかったけど、きょうび無線LANというひみつへーきができたんだね。ヨカタラヤテミテ。

ジリ・ヴァンソン

2008年05月15日(Thu) 00:33:36

 何の気なしにテレビをつけたらフランス語講座だった。そして、出ていたヒトは……なんとのだめinよーろっぱぁーのジャンことジリ・ヴァンソンではないかっ! びっくりしたー。あの人はほんとにフランス人だったんだね。日本語上手だけど、フランス人が頑張って勉強してうまくなった口だったのだ。

 ドイツ語講座ではアリtoキリギリスの石井さん出てるし、のだめも保険の宣伝とか、千秋も永谷園(ぷっ)とか出てるし、のだめのヒトは旬なのかな。とうとうDVD出たね。何か特典あれば買うんだけどなー。メイキングがあまりにも面白かったので、届いた頃は毎日二回くらい見てたよ。何度見ても面白かったんであるよ。

 ついでなんだけど、今日の電車読書用本はこれだ。以前買っておいたのをいまさら読んでる。易しいフランス語で名場面を翻訳しつつ解説をくわえるというなかなか面白い趣向の本。でも、入門者がこれから学ぶにはちと難しいかな。一通りわかっている人が読むにはいいと思うよ。

森雪コスチューム

2008年05月13日(Tue) 12:43:08





 こんなもの前からあった? 全身像がほしいところだが、・・・・・・いやいやいや、デルモがブサイクなのでこの方がいいと思うぞ。さてはデルモ出演料ケチったか? ヲタクな諸君は彼女に着せてあげよう。やっぱり脚が長く細くないとつまらんな。出るところはそんなに出てなくても可。森雪はスレンダーなのさ。

エマの生まれた書斎

2008年05月08日(Thu) 08:55:17

 昨日、本屋に寄ったら思いがけず凄いものをみつけてしまった。表紙の絵を見てすぐにわかったけど、森薫の絵、森と言えばまだエマ/シャーリーというメイド・ヴィクトリア朝の世界の人で、もう、すぐ飛びついた。メルダース家の浮気女メイド、マリアがこんなに大々的にかかれたことは初めてだ。


 これは漫画家になりたい人のための情報誌なので、わたくしなんぞには全然縁がなく、なんかスミマセンな感想持ちつつファン側のヒトとして買っちゃったー。でも、特集の14ページのために買うだけの価値はあった。
 本当に、漫画が生まれるまではこんなに緻密な作業と心砕きが必要なんだねえ。改めて技術に感服するとともに、その努力を読者に感じさせない心意気に畏敬の念さえいだいた。
 大昔、一回だけ漫画描いてみたことがあるんだけど(勿論そんなのはただのらくがきでとても人前には出せない)、めんどくさっ! というのが刷り込まれた。以後、もう全然かかないし。だって文章で一行表現すれば伝わるぢゃーん、とまあ、とことん文章書き側のヒトである。ツールtoolというのは人によって違うわけだから。たまたま自分には絵pictureより映像movieより文scriptが手頃だったのだ。写真とかは撮るし画像は大好きだけどね。

 そんなこと考えつつ、森は若いのに、もう巨匠とさえ呼んでいいような気がする。ヴィクトリア朝とエドワード朝イギリスへの並々ならぬ思い入れ/教養が文芸大作のバックグラウンドを作ったのだ。好きなことをやっていれば結果はついてくる。この6年たまたまメイド萌えという風潮があったのも幸いしたけど、森の基点はそんなところにはない。もっとずっと奥深い立脚点を持っているのだ。

 森の書斎を見られたことで何だか勇気づけられた。あれら「氷山の一角」が作品『エマ』なのだ。

リンボウせんせい講演会

2008年05月05日(Mon) 23:30:37

 今日は夕方、思いがけず林望大先生の講演をラジオで聞くことができた。いつも夕方のロシア語・イタリア語連続放送の後は株式市況なんだけど、祭日は文化講演会の録音したものをやってる。
 わたくしは以前ファンクラブみたいなもの(きくりこうしどう、という後援会)に入っていて、署名本を沢山買ったものだが、今ではインターネットサイトがあるからニュースもすぐ見られるわけでやめちゃった。
 改めて、この人、凄い人である。本業は古典文献学者でありながら、イギリス滞在中の思い出を書き綴った『イギリスはおいしい』が大ヒット。以後、余りにも忙し過ぎて大学教授職を辞め、作家に専念することとなった。
 本日の題目は、正確には忘れたけど、「いかによく生きるか=いかによく死ぬか」ということを巡る話だ。アルフォンス・デーケン先生の著書を端緒として、林の実母の死に方(癌である)、父たち周囲の人々のあり方、そして自分自身の交流したイギリスの教養人たちのあり方など、よく生き、よく死んだ人たちの生き方に及ぶ。
 しかし、それらの話は決して湿っぽくはならないし重々しくもならない。みな立派な大往生だからである。林を知っている人なら、あああの調子ね、と分かるだろうけど、いつもの自然なユーモア。昔、林の著書をずいぶんまとめて読んだ頃のことを思い出して懐かしくなった。また読みたくなったよ。
 朝に道をきかば夕べに死すとも可なり。。。などとは言わなかったけど、結局そういう話だ。日々是勉強、無駄な時間はない。なにかあったら立ち向かうことである。
 (蛇足だけど、かくも教養高い流石のリンボウ先生も小説書きとしては駄目だ。『スパゲッティジャンクション』を別のペンネームで出したんだけど、こりゃー箸にはひっかからないスパゲッティーだったぞ。)

BS2ミテマス

2008年05月04日(Sun) 19:38:02

 たまたまつけたらやってたー。四天王のうちの一人は知らないなあ。水木ング歳とったのう。でもかっこいい。BS2番組表

・・・とゆわけで結局全部見ちゃった。んー、なかなかすごい顔ぶれでしたな。びっくりしたのはド根性ガエルのぴょん吉こと生ちぢまつさちこ女史&主題歌の石川進キューピーちゃん大先生が現役だったことさ! しかし歳とった・・・・・・などと言うことは同じ。あんまりアップにすると皺が映るんだよなー。
 やはり日頃から人前に立っている人ほど若いね。見られることによって磨かれるのである。トリが尾藤イサオというのはなかなか渋い人選であったな。あしたのジョーは、勿論力石のリアル葬式が催されたことなどアニメ史上では大きい作品ではあったけど、松本・石森という大きな流れの人ではなかったし、珍しい。普段アニメ界の人ではないし。サミー・デイビス・ジュニアに憧れて舞台人になった人らしく、誰よりも若々しかった。

 でも、歌から言ったら何といっても『真赤なスカーフ』が断然美的だったね。これは贔屓目でも何でもなくて、芸術的な構造をしていたということさ。ただ今回一点だけ残念だったのはアレンジがちょっとちがったこと。最後の「ラララ真赤なー」のところ、オリジナルでは「まっか」までがBmで「なー」からがF7になるんだけど、「まっかなー」全部がF7だったよ。んー、オーボエも弦楽もなかなか真に迫っていただけにここは惜しい。

フリーダム

2008年05月03日(Sat) 14:15:26

 ミテマス。大友かつひろは絵が怖くて好きじゃないんだけど、何やら日清のCMでドラマチックだったので興味ひかれていたのさ。

 なるほどねー近未来のありそうな話だね。猿の惑星月版というところかな。